ミジンコ

同性愛者です。元彼との別れをキッカケにブログを始めました。

仕掛けの無いハニートラップ

 

 

それは仕事に追われてる朝、元彼からLINEがきていた。私がそれに気付いたのは昼頃になる

 

一息ついてスホマの電源を入れた時、彼の名前が真ん中にドンっと表示されていたのだ

 

私は息を飲んだ

なぜなら、別れたあの夜以降、一度も連絡は取っていなかったからである

 

外側はわかるのに、中身がわからない

 

中身はなんだろうか。もしかして、彼からのごめんなさいメッセージ?或いは、よりを戻したいメッセージ?それとも…

 

まさにパンドラの箱である

 

これは心を落ち着かせなければ

私はバグバクと興奮した心臓と共に、LINEを開いた

 

その内容は、思わず「はぁ!?」と言葉を吐き出したくなるほど、凄く酷いものだった

 

簡潔に書き記すならこうだ

 

〝君が立ち直るまで、友達としてなんでもするよ〟

 

それを観た瞬間、私の脳内では「?」マークが一気に増殖していったのが解った

 

理解できたのはそれぐらいである

 

私は彼に8文字で返事を返した

 

「意味がわからない」と

 

だが本当に理解に苦しんだのだ

今まで同じ言語でずっと会話してきた筈なのに

、外国人と…いや、もはや宇宙人と交信しているようだった

 

その後、元彼は直ぐに釈明してきた

 

私を〝助けたかったと〟

 

いや、釈明の余地はない

 

私は、彼の余りにも傲慢でデリカシーの無い返事に腹が立った。が、それと同時に更に深く傷付いた

 

それはまるで、鋭利なナイフで心臓を突き刺した後、そのまま捻って完全に息の根を止められた様な感覚だった

 

だが私も、いつまでも親の手を借りる子供では無いのだ

 

私は反撃の狼煙をあげた

彼の欠点を、マシンガンのように浴びせまくったのだ

 

まさに、それは哀しみを脱ぎ捨てた少女が機関銃片手に立ち上がった瞬間であった

 

振った相手からのフォローなど、これほど辛く、残虐な事は無いだろう

辱めを受けた少女のような気持ちにすらなる

 

彼の放ったその言葉は、まさに〝優しさの無い気遣い〟

 

それは仕掛けの無いハニートラップなのだと

 

仕掛ける意味も無く、ただ気遣いという罠を地面に置くだけなのだ

 

彼には相手の気持ちを理解しようとするスキルが無い

 

それはどんなに付き合った回数が多いかなんて関係は無い

 

彼がそこを理解できないのであれば、例え新たな出会いがあったとしても、今まで通り長くは続かないだろう

 

恐らく彼は振られた回数より、振った回数の方が多いのだ。

 

 

終わりからの始まり

 

約2年続いた恋愛が終わりを告げた。

 

それは余りにも唐突で冷淡としていた。

 

まさに彼はLINEを通じて、私との関係に白旗を振ってギブアップ宣言してきたのだ。

 

私は彼に会って話そうと伝え、彼も渋々だったが了承し、直接会ってくれた。

 

私が直接会うことに拘ったのには理由がある。

通話、メール、LINE、Twitter、その他SNSで別れを告げらるなんて余りにもナンセンスで、余りにも悲しいことだと思ったからだ。

 

そういったツールを使えば、当て逃げのように見えない相手に感情をぶつけるのは簡単だろう。

 

だけど当てられた側はたまったもんじゃない。

顔の見えない相手に 訳が分からぬまま言いたい放題言われ、じゃあね!バイバイ!だなんて、余りにも他人行儀である。

 

私は、彼にだけはそうして欲しくなった。

 

いざ、彼を前に会うと、私は現実を受け入れられずに黙り込んでしまった。

彼はその場の凍りつく空気を少しでも和まそうと薄い笑顔を見せて別れる理由を淡々と話していた。

 

別れの原因は、彼の理想に私が届いていなかったことが一番の理由だろう。

 

実は、今回の別れ話しはこれが最初では無い。

以前にも別れを告げられたことがある。

 

内容はほとんど同じと言っても良い。

 

その時の私は彼に〝成長する〟と約束し、その場は仲直りをした。

 

それから私は自分なりに努力をした。が、また別れを告げられた。

 

つまり、最初の別れを告げられてから今まで、彼から観て私は成長していないように見えたのだろう。

 

私は納得できなかった。

世の中で100%完璧な人間はいない。少なからず欠点は必ずある。だが彼はそれを認めてはくれなかった。

 

勿論、完璧主義者の彼にも欠点はあった。

私は彼の欠点を受け入れるよう努力し、彼は私の欠点を治そうとしたのだ。

 そう。それはまるで水と油のように、決して交わらない考えを持ったまま、この2年一緒に歩んできたことになる。

 

だけど私は、それでも幸せだった。

 

彼にどんなに指摘されても、嫌になることはあったが、愛情を失うことはなかった。

 

話しは遡るが、まだ彼とは付き合う前、私のために彼は東京から帰ってきてくれた。

 

そう。遠距離の関係が終わったのだ。

 

私はそれが嬉しくて、車を買い替えた。そして、その慣れない車で迎えに行った。

それは今後、彼と一緒に乗り回す為に無理して買った2シーターのオープンカー。それはまるで愛を表現しているかのような真っ赤な車で、周囲の注目を浴びた。

 

車内は凄く狭かったが、彼の大きい身体と密着できるから嫌いではなかった。きっと彼も同じだっただろう。

まるでそれは、2人だけの小さな愛の巣のような空間。その囁かな空間の中で、2人で愛を確かめ合ったのだ。

 

そんな車内も、意味が変われば地獄となる。

 

 真っ赤な色は愛というより流血で、小さな愛の巣は尋問部屋のように感じた。

 

そんな息が詰まりそうな狭い空間の中で一通り話し終えた頃、最後に彼から質問を投げかけられた。

 

「もし俺が東京に行く事になったら一緒に行ってくれる?」

 

その言葉は軽く投げ出された割には、かなり重く感じた。

 

そして俺は返答した。

 

「行かない」

 

そこで全てが終わりを迎えた。

会話、視線、愛、今まで交わっていた全ての事柄が、一瞬で消え去ったのが肌から感じ取れた。

 

私の放った言葉には意味があった。僅か数秒の間に脳をフル回転させ、出した答えなのである。

 

彼も私が行かないことを知っていたからこそ、敢えてそこに触れたのだと感じた。

 

涙も無く、それは凄く静かな最後だった。

 

次々に発展していく最先端技術でも、今はまだ、時の流れは止められない。ならば、いつまでも立ち止まってもいられない。ヒッチハイクで誰かを待ってるなんて余りも無謀。年齢を重ねていれば尚更だ。

 

だからこそ前を向き、涙を拭い、右手でズキズキと脈打つハートを支えながら、

最初の一歩を踏み出さなければならないのだ。

 

これほど怖いことは無いだろう。

 

これほど不安なことも無いだろう。

 

それでも私は歩き出す。

ゆっくりで良い、足で引きずってでも良い、歩みを止めて、不意に後ろを振り返らないように、私はただ無我夢中で歩いて行く。

 

強く、生きる

 

それだけの為に